ジェンダーギャップ:男性的な直線と女性的な曲線
ジェンダーギャップ:男性的な直線と女性的な曲線
たびたび男性と女性の間でどちらの性の方が優秀か、と言うことで議論になることがある。車の運転、料理、マルチタスク、コミュニケーション、ビジネスなど殆どのジャンルについてこの議論はなされてきた。何らかの議題で男性の方が優秀か、女性の方が優秀か、と言う議論が始まると必ず皆自分の性の方が優秀であることを説明しようとするものだ。こういった議論も普通は、楽しい会話の一つとして会話に参加していた男性も女性も、「合意しないことに合意」して次の話題に移る。
しかしあまり議論の矛先が向けられないジャンルは「トレード」である。自分個人の口座でトレードする個人トレーダーであろうが、大手銀行の法人口座でトレードするトレーダーであろうが、世界中におけるトレード層は圧倒的に男性によって占められている。はっきりとした数字は出ていないが、トレーダーの約80%は男性である。世界中の金融市場の動向に注視し、口座を開設する個人トレーダーの数は年々増加傾向にある。最近の金融危機によっても明らかになったように、銀行に勤める経験豊富なトレーダーも一般人と同じくらい、またはそれ以上にお金に関してうっかりミスをすることがあるようだ。
男性と女性の生理学的な違いはとても大きなものであり、この違いについての研究調査は常時行われている。実証研究と学術研究の側面から見ると、男性と女性との間の違いは科学によって証明されている。ケンブリッジ大学のSimon Baron-Cohenによると、男性の脳は「系列化」と「機械論的」な傾向にあるという。系列化とは、分析調査を行いシステムを構築する動因である。系列化する人は、直感的にどうやって物事がうごくか考え出し、システムの所作を決定する基礎をなすルールを抽出しようとする。それとは対照的に、女性の脳は「感情移入」、または「心理主義的」な考え方によって特徴づけられる。感情移入とは他人の感情と考えを特定しようとし、その感情に見合った感情で反応しようとすることである。ケンブリッジ大学とサイモン・フレーザー大学の研究によると、数学、物理学、そして工学は様々な理論的な「システム」によって支配されている分野であることから、系列的で機械論的な考え方をする男性の方が女性に比べてそれら分野が得意である主な理由だと言う。女性の方が男性と比べ、より言語や人を見抜くことに優れているのは、この感情移入や心理主義的なスキルによるものだと言う。
これらをトレードに当てはめると、男性の方が金融市場の動きを分析し理論化することに優れているように見える。しかし女性のほうがより他のトレーダーの心理を予測し、その工程で自分の感情をも管理することに優れている。女性の方が男性よりも感情的であると言われているものの、女性は男性と比べその感情をよりうまく制御することが出来るようだ。トレードにおいて、この点が鍵になる。トレードにおいて、自分自身の感情をどのように扱うか、また他の市場参加者の感情をどの程度読むことが出来るかが2大重要な要素となってくる。
誰でも一般的なステレオタイプな男女像を知っているが、勿論例外もある。しかし例外があるからと言って必ずしもその例外がルールを覆すと言うわけではない。たとえば平均的な男性よりも身長が高い女性はたくさんいるし、平均的な女性よりも身長が低い男性はたくさんいるが、「男性は女性より平均的に身長が高い」と言う一般的な話は有効である。
ベストセラーとなったMen are from Mars, Women are from Venus の著者John Gray 氏によると、男性は主に論理的で理性的な左脳を使って物事を行うと言う。その一方で女性はより大きな脳梁を持っているため、男性と比較しより早くデータを右脳から左脳へ移動させることが出来ることから、両脳を使うと言う。
2009年に英国BBC放送局はMillion Dollar Tradersと言うドキュメンタリーで、過去にトレード経験のない初心者のトレーダー12名が実取引でどのような成績を見せるかを追った。実験の結果、グループは主に男性で占められていたしもかかわらず、ある女性が最も優秀な成績を残したと言う。この主な理由として、彼女は感情を上手くコントロールすることが出来、トレードの論理的な側面と同じく重要となってくる真理的な側面のバランスを上手くとることが出来たからだと言う。同番組は科学施設で行われたわけではないが、男性のほうが「トレーダー」になりたがる傾向があるものの、女性の方がトレーダーに向いていると言う広義なパターンを見出すことは出来る。
このことから、女性の方がトレーダーに向いているものの、男性の方がトレードする可能性が高いということが分かった。これは数百年にわたって発展してきた社会的な要因に深く関係している。例えば女性は子供の面倒をみなければいけないため、男性が一家の大黒柱となる。平均的に見て女性のほうが家庭的でリスクを嫌う傾向にある。女性が感情を重視する一方で、男性は活動を重視する。男性の方が女性と比較し、家庭のために収入を得ることにより責任を感じていることは間違いないと言っても過言ではないだろう。
男性が直線であれば、女性は曲線である。男性が理論や実際の行動を取りやすい一方で、女性は感情知性や自己認識、心理状態により重きを置く傾向にある。トレードで長期に渡り収益をあげるにはこの両者の要素を兼ね備えていなければならない。トレードで成功を収めるには脳の感情をつかさどる部分と理論をつかさどる部分を同時に利用しなければならない。最高のパフォーマンスを収めるには理論的な左脳が感情的な右脳と連動して働かなければならない。脳のバランスが取れていれば、トレーダーはどのトレードに対しても理論的な側面と感情的な側面を見出すことが出来、同時に他のトレーダーがどのような事柄を「理論的」と見ているか、またどのような感情によってその他のトレーダーが突き動かされているかを念頭に入れておくことも出来る。金融市場はとても動的なものであることから、トレードに対するこのようなアプローチは取り入れるべきであろう。
最終的にトレードとは勝ちか負けのゲームである。しかし「トレード」とは最初の注文を出すずっと前から始まっており、ポジションの手仕舞いを行った後でも続いている。感情を自分の意のままに操作し扱うことが出来る者は、出来ない者と比較し、より良いトレーダーになる。科学界によると、女性のリスクを嫌い自己管理を行うことが出来る生まれもっての性質によって、トレーダーと言う職業は女性に人気の職業であってもおかしくないと言う。社会構造体系と、トレーダーとは非常にリスク性の高い職業と広い見解によって、残念ながら女性はトレーダーと言う職業を適当な職業として見なさない傾向にある。トレードとは、利己主義的で男性的な特性が合わない職業であるが、逆説的に世界中のトレーディングフロアの大半を占めているのは大きなエゴを持つ男性陣である。本当に不思議な世の中だ。
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